デンキチの木片小魚物語3

Sprout Lures の製作記録と喜怒哀楽日記

吉田川の今昔物語【令和元年 東日本台風の水害に寄せて】

 去る 10月27日 夕刻

 久しぶりに一級河川 吉田川の流れに目を向けることができました。

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 まぁ、月に数度は吉岡大和町吉岡:吉田川流域に広がる平野部に位置する町)界隈へ仕事に出向いていますからね…。

 その都度、この川を突っ切っていることを考えれば、「久しぶり」という表現は相応しくないかもしれません(苦笑)。

 さわさりながら、2019年10月に強襲した台風19号がもたらした豪雨よって決壊・越水した吉田川では、今でも河川改修工事が続いていおりまして…。

 要は、釣り人の目には優しくない状態だと…(愁傷)。

 そんな折に、吉田川川上方面(さほど上流域ではないが)で検査業務があったのを幸いに、令和の吉田川を眺める時間を持つことができました。

 此度は、思い出話あり、民俗学テイストの話あり、自然災害についての話あり、カメラの話あり、といった具合の種々雑多な内容になっております(笑)。

 秋の夜長にお時間の許す方はご一読下さいませ。

 

吉田川の今昔物語

1:吉田川の概要 

 最初に吉田川の概要を押さえておきましょうね。

 手っ取り早くWikipediaから引用させて頂きます。

 吉田川(よしだがわ)は、宮城県を流れる1級河川鳴瀬川水系鳴瀬川の支流である。松島丘陵北側を西から東に流れる。

 流路(一部引用)

 宮城県黒川郡大和町西部付近の奥羽山脈にある舟形連峰・北泉ヶ岳北を発する。宮城県のほぼ中央を西から東に流れ、中流域は北の大松沢丘陵と南の松島丘陵とにはさまれた低地を流れる。鳴瀬川河口より800mほど上流で鳴瀬川合流する。

 歴史(一部引用):

 かつて吉田川には、鳴瀬川の自然堤防に遮られる形で品井沼という遊水地があった。吉田川品井沼流入し、そこからは小川が鳴瀬川に注いでいた。大雨などにより鳴瀬川増水すると逆流して品井沼が氾濫し、多数の被害を出すことが度々あったため、1697年(元禄10年)から、品井沼水田に変える干拓工事が数次にわたって実施された。

2:私的な吉田川の印象

 釣り人的な情報としては…。

 当然、吉田川渓魚が釣れる川です。

 前述の情報通り、舟形連峰を源にしている川なのですが、途中で二股に分かれた先に嘉太神ダム・南川ダムが配されており、双方のバックウォーターを含めても…どうなんでしょう…?。お世辞にも「懐が深い川」とは言い難いかなぁ…

 あくまでも個人的見解ですけれど…。

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鳴瀬川の40イワナ

 それから、アブが多かった記憶が強く残ってますねぇ。まぁ〜こればかりは、吉田川へ行ったタイミングの問題の様な気もしますが(苦笑)。

3:鳴瀬川水系の思い出と期待

 そんなこともあって、鳴瀬川水系の年券を購入していた時分(2005〜2009年シーズン)は、吉田川よりも鳴瀬川界隈に足を運ぶことが多かったですね。

 実際、釣果鳴瀬川界隈の方が良かったですし(微笑)。

 私自身の釣り史を振り返っても、尺上イワナとの出会いが一番多い川に該当するのが鳴瀬川です。(自己記録的にもホームの名取・広瀬川水系を上回る。)

 加えて、ルアーで初めて尺ヤマメを釣ったのも鳴瀬川なので、個人的には頗る印象が良い川になっています(微笑)。

 とまれ、近年は気候変動の影響で、全国各地を流れる河川の多くが、極端な渇水と増水の繰り返しによって川の流れ(地形)魚の付き場が変化していることもあり、概して釣りの難易度が上昇傾向にあると言えますし、こうした状況は、鳴瀬川にあっても近似傾向にあると聞いております。

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鳴瀬川本流の36イワナ(雨鱒系)

 がしかし、今尚、可能性というポテンシャルを漂わせてくれる鳴瀬川に対して、私が寄せる期待は小さくありません(微笑)。

 ここ暫くは、追波川・旧北のサクラマス執心することになりますが、その思いを存分に清算できた折には、是非とも鳴瀬川に馳せ参じたいと考えています。

4:吉田川 氾濫の過去と背景

 さて、話を吉田川に軌道修正しましょう(汗)。 

 吉田川過去に起きた氾濫事例を各方面の情報を紐解いてみると、概ね1986年8月に発生した集中豪雨(8.5水害)と、本稿で取り上げる2019年10月の台風19号による豪雨被害2事例により多くの紙面を割いていますね。

 こうした事例の背景を鑑みると…。

 その時々の為政者の政策によって干拓工事が推進されたり、はたまた減反政策によって水田農業放棄地になったり、住宅地・商用地に転用されたりしているという現実もまた、自然災害による被害を助長する要素になっている様に思われてなりません。

5:「まないた橋」の謎

 それでは、時間を令和3年10月27日へ戻します。

 帰路の途上で車を停めたのは、吉田川にかかる「またいた橋」という何とも微笑ましい名前を持つ橋の袂でした。

 かつては山女魚の姿を追った川ですから、この橋の存在は知っていました。けれど、その当時は「ユニークな名前だなぁ。」といった程度の認識でしたね。

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 しかし此度は、風化した親柱をマジマジと眺めたこともあって「何で平仮名表記なんだろう?」という疑問好奇心が湧いてきました。

 いつもの癖ですね(苦笑)

 でも、こうした機会だからこそ記憶と想像の扉が開くのです。(ロートルの脳みそは、こういう刺激がないと活性化しないのです。)

 「まないた」地名的な漢字をあてるとすれば、「真名板」とか「俎」が挙げられるでしょう。でも、この周辺には真名板という地名はありません。

 となると………。 

 若い時分に、九段下で見つけた「俎橋」記憶が蘇りました。

 この漢字「俎(まないた)中国の祭器を指し、具体的には「料理を載せる板」生贄を載せる台」を意味していますからね…(不穏)。

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 こういう想像や推理を働かせていくと、目の前の光景が更に陰影を増して立体的に見えてくるから面白いものです(微笑)。

 とまぁ、かような記憶と想像から、更に好奇心が付いてしまった私ですが、一旦冷静になるべく、車中に戻って地図を捲って周辺の地名を確認してみると……。

 ありましたよ。

 「魚板(まないた)という地名が(爆)。

 この集落は、吉田川の左岸に沿って細長く拓かれています。

 なるほど合点がいきました(微笑)。

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 でも、魚板という文字面だけをみると、禅宗の寺で使われている魚の形を模した板「ぎょばん」を指すんですよね…。(この板を叩いて合図する。)

 恐らく、この地名は何らかの当て字なのだとは思うのですがぁ…。

 念のため、魚板という地名について手持ちの資料で調べてみました。しかし、災害を示唆する要素や東北地方で散見されるアイヌ語由来の地名ではないようですね…。

 読み「マナ・イタ」と分けてみると、アイヌ語由来的な雰囲気がしないでもないですが、現況はそのような見解に出会っておりません(笑)。

 そこで、手前勝手な妄想になりますが…。

 吉田川川漁師によって捕獲され、この魚板集落で処理された川魚を、葛籠を背負った婆様たちが周辺地域へ行商して歩いた…。

 そんな長閑な暮らしの光景を思い描いているところです(微笑)。

6:台風19号の被害

 さてと、本題に入って参りましょう。

 冒頭でも記した通り、吉田川と云えば、2019年10月12日〜13日にかけて宮城県を通過した台風19号による豪雨・洪水被害記憶に新しいでしょう。

 この台風19号は、当該河川流域のみならず、宮城県全域で猛威を振るいました。それは、宮城県の土木部河川課がネットにあげている資料を見ていただければ把握できると思われます。(殊に、県南に位置する丸森地域の被害が広く報道された。)

 がしかし、本稿では吉田川に限定して取り上げて参ります。

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 まずは、吉田川の場所や流域界、そして台風19号水害を被った地域を把握することが望ましいでしょうね。

 ということで、河北オンライン2019年12月27日記事)で分かりやすい絵図(上図)を見つけたので、利用させて頂きましょう。

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 私が降り立った「まないた橋」上写真に写っている「魚板取水堰」は、前出の絵図左端部よりも更に西側に位置した流域に設けられていますので、決壊や越流による被害の様子がTV等のメディアで流されることはなかったと記憶しています。

7:喉元過ぎれば〜にならないために

 この台風19号豪雨災害については、地元メディア河北新報社)がネット上でまとめサイトを設けています。

 この様な地元メディアが集積した情報もまた、人々の記憶深く刻み込むために必要なデータベース(DB)になり得ると感じています。

 これらの特集記事の多くは、当事者は勿論の事、様々な立場の識者や当局の責任者考え方や意見などを知る機会にもなります。

 また、別な言い方をすれば「DB=無料の公共財産」とも言えるでしょう。だからこそ、定期的に触れることで災害に対する意識の醸成が進むと思います。

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 一方、こうした民間のDB的な情報とは別に、行政当局でも適時に関連情報(方針の告知・案内)を提示している模様です。

 その一例として、台風19号の一過から2ヵ月余を経た同年12月には、吉田川流域の町村・宮城県国交省の連名『令和元年台風第 19 号による水害を踏まえた「吉田川・新たな水害に強いまちづくりプロジェクト【中間とりまとめ】」を公表します。~流域が一体となった、大規模氾濫時の被害の最小化を目指す~」』という中間報告が発表されていますね。

 どうでもいいけど、表題から既に寿限無ですな(苦笑)。

 それにしても、こういうペーパーって、どの程度の市区町村民が読んでいるのでしょうか…。それもまた甚だ疑問ではありますね…。

 本来であれば、当事者の立場にある人々の目に触れるべきは、精度が高い行政当局の情報であるはずなのですが、実態は大きく異なるようです。

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 悲しいかな…こうした状況は、ある意味致し方ないんですよね…。

 地味だけど重要な情報を、能動的ネット上で探す人は多くないですし、そもそも文字を読むことが苦手な人「書類を見つけて読んで下さい!」とお願いしても動いてくれそうもないですからね…。

 何を隠そう、拙ブログ「文字嫌い」の人にとっては苦行に他なりませんよね。なれば、行政当局ばかりを非難することは止めにしておきましょう(笑)。

 だからこそ、教育って大事なんですよね(しみじみ)。

8:私たちは試されている

 さてと、最後に今一度「長閑な光景」に思いを寄せましょう。

 件の「まないた橋」の向こう側に広がる稲刈りを終えた田んぼと、暖色に色づき始めた里山の山肌を眺めていると、幼き頃に見た日本昔話の世界に身を置いている様な感覚に陥ります(微笑)。

 こんな静かな光景を眺めていると、この地に暮らす人々の淡々とした営み積み重ねと広がりを感じずにはいられません。

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 川は昔から流れ、人はそこに暮らしてきました。

 その長い歴史の中にあって、単純に「川からの恩恵」「自然からの賜り物」とは言い難い悲しみを伴う不都合が生じてきたことでしょう。

 そして、同時に「それらを受容れなければ暮らしていけない。」という切実で過酷な現実もまた、そこに暮らす人々を強くしてきたのだと思います。

 近年の極端な気候変動甚大化する自然災害を前にして、今を生きる私たち英知と粘り強さ問われているような気がしてなりませんね(微笑)。

余話(写真の話)

 此度は、現場からの帰り道ということもあって、仕事用に購入した防水・防塵カメラ(Olympus/T‐6)を使って撮影してみました。

 ※仕事の合間に愉しむ「隙間の釣り」では持ち出すことはありませんが、此度は紛失する心配もありませんでしたし、水に浸かる懸念もありませんので。

1:HDRモードで撮影してみたものの…

 夕刻迫る時間帯だったので、強い西日が雲の合間から射しこんできました。「このまま撮影しても明暗が極端な写真になっちゃうなぁ…。」と考え、HDR撮影のモードに切り替えて撮影してみることに。

 カメラ本体のモニタでは、撮影結果を精緻に確認することはできないので、念のためPモード(設定を自分で変えられるモード)でも撮影しておきました。

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 帰宅後に、双方のモードで撮影した写真を検証してみましたが、HDR処理された写真の方は全体的に暗く、特に暗部が潰れている印象を持ちました。(この状況下において、撮影結果が暗くなったのは当然と言えば当然のこと。)

 故に、本稿ではPモードで撮影した写真をソフト上でHDR処理してから掲載してみました。まぁ、この方法が最適解と云えるか否かは分かりませんが…。

 因みに、使用しているソフト下リンクにてご確認を。

 とは言え、一眼の様なエンジンを持たない防水・防塵カメラであっても、かなり微細な表情を捉えることができると感じることができました(微笑)。

 日々、施工管理系の写真ばかり撮影していると、T-6本来の性能に触れることができませんからね。

 たまには被写体の傾向を変えてみないと駄目ですな(汗)。

2:鱒を写す

 何はともあれ、我らが愛する鱒族撮影する環境は、お世辞にも撮影に恵まれているとは言い難かったりしますよね…。

 そもそもがカメラには向いていない水場ですし(笑)。 

 加えて、光量の少ない時間帯・ロケーションで、光を反射する繊細な鱗をもつ被写体を相手するわけですから容易ではないですよね(しみじみ)。 

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 前出の鳴瀬川水系で釣ったイワナの写真は、デジタル一眼レフ初導入したばかりの私が、水没や転倒の危険を厭わずに撮影した時のものです。

 新しい道具を手にした人間の無鉄砲振りってのは恐ろしいですね(苦笑)。

 双方共に夕マズメだったこともあり、慣れないカメラでの撮影は難しかったのですが、それ以上にカメラの設定も構図も何もあったもんじゃない状態(興奮&酩酊状態)だったので、当然の如く最悪な出来になってしまいました。

 あの時は、イワナに何度も詫びながらリリースしたっけ…。臆面なく「ありがとう!」なんて発したら、罰が当たって口が腐ってしまうと(苦笑)。

 人間(釣り人)は、かくも罪深き存在ですなぁ(しみじみ)。自分が産んだ「業」は、自分で引き受ける覚悟を持たねばなりませんね(微笑)。

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 とまぁ、最初はそんな感じでしたからね…。

 魚の撮影については、いずれまた綴る機会もあることでしょう。

 ※生き物を手にするわけなので、何ら無頓着に撮影しているアングラーは少ないと思いますし、私も自分なりのルールに則って撮影しておりますので。

 とまれ、不利な条件が複合的に重なっていたとしても、自分が釣り上げた魚可能な限り美しくそして素早く撮影できるようになりたいものです。