【鹿角 悶絶遊戯#03】埃と轟音の中で
あっという間にお盆休みは過ぎていきました。
まぁ、こんな情勢(長雨・コロナ)でしたからね…。
私と云えば、お盆休みの恒例行事(アトリエの大掃除・庭木の剪定・不足品の買い出し等々)を粛々とこなしておりましたよ。
悲しいかな、何れの行事も雨降りには往生させられましたが、居住まいが整ったことで心身共に健やかな状態になりましたので良しとしましょう(微笑)。
一方、次男坊の予定は大幅に狂ってしまいました。
ここ宮城県も多分に漏れず、オリンピック前後からコロナ感染者が急増(現・宮城県知事の愚策による影響大)してしまい、隣県の宿泊施設で行うはずだった合宿(高校のプログラム)が延期となってしまったのです。
子ども達の生活状況は、云わば「私の物差し」になっているので、自らの行動を振り返る機会にもなるわけですが、個人に出来ることは限られますからね…。
今はただ、これ以上状況が悪化しないことを祈るばかりです。
さてと…気持ちを切り替えましょうね(微笑)。
8月も中盤を迎えた今、まとめることが出来ていない「鹿角 悶絶遊戯」の経過を備忘録にしたためておかねばなりません。
という事で、拙い物語を綴って参りましょう。
埃と轟音の中で
稀有で酔狂で賢明なる拙ブログの読者様にありましては、去る記事により「鹿角で何を作っているのか?」という疑問を払拭することができたと存じ上げます(微笑)。
ということで、オピネル№9のハンドル(柄)を作っているわけですが、本稿ではブレードを格納する溝を加工していく様子を記録しておこうと思います。
丁度、上写真が7月17日の作業になりますね。
これは、言ってみれば「呼び水」の様な作業になります。
最初から予定した幅厚のディスクを使って加工するリスクを回避するために、まずは薄い幅厚のディスクで道筋を作ってやるといった感じでしょうか。
こうした作業(不整形で硬い材料を電動工具を使って切る・削る場合)は、失敗した際には血を見る場合も少なくないので、予め「その先の具体的な作業や仕上がりのイメージ」を持てるような「予行演習的作業」を咬ましておくと良いでしょう。
さて、前置きはこの位にして…。
7月18日以降の経過を辿っていこうと思います。
1:どうやって溝を切るか?
石の様に硬い素材をどうやって切るのか?
ん?!「どうやって切る?!」とな?
否!
この場合の「切る」とは、部材を「切断」するということではなく「溝を切る」という表現が適切だと言えるでしょう。
しかも、所定の厚さ・深さで溝を切るという与件があります。
加えて、手持ちの工具で材料加工を行うという足枷もあるわけで…。だからといって、手鋸で溝を切るなんてことはしたくないし…(汗笑)。
といったわけで、ディスク・グラインダーを使って溝を切ることにしたわけですが、この「暴れ馬」に繊細な仕事をさせるのは至難の業でもあります。
ディスク・グラインダーって想像以上に危険ですしね。だから、冒頭に記してある通り、小型リューターを使って前加工を済ませたというわけです。
※私自身は、仕事柄この手の工具に慣れ親しんでおりますので過度な不安はありませんが、加工の過程を提示する以上、一通りの危険と安全策をお知らせする必要があると考えておりますので、精通者の皆様にあっては「釈迦に説法」になるやもしれませんが、くれぐれもご理解を賜りたいと思います。
2:溝幅の拡張
それでは、首尾を記しておきましょう。
前加工:小型リューターで1㎜の浅い溝を切る。
ここからはディスク・グラインダーの出番ですね。そして、ナイフのブレードを適時あてがいながら深さを調整していくことも重要となります。
中加工:ディスク厚1㎜で溝の幅厚・深さを拡張。
仕上げ加工:ディスク厚1.6㎜で更に溝の幅厚を拡張。
去る記事にも綴りましたが、ディスク・グラインダーって、まぁまぁ荒っぽい工具なんですよね。想像以上に重たくてパワフルですし、音も凄い(笑)。
加えて、切断対象にも因りますが、粉塵や火花が散るので、未経験者にとっては「制御しにくい工具」であるに違いありません。※屋外作業を推奨
特に、鹿角の様なマテリアルは、切断時に相当の埃と臭気を発散してくるので、それなりの準備(防塵マスク・目を保護する物)が必要となります。
いずれにしても、ディスクが唸りをあげて回り出したら、パワー負けしないように腰を入れながら、安全と加工精度を意識して作業するのみ(微笑)。
3:加工の核心部
埃と轟音にまみれた作業の後に待ち受けているのは、ややこしい部分の加工です。
いわゆるブレードとハンドルの接点部分なのですが、前工程と同じディスク・グラインダー「暴れ馬」を使わねばならないので気は抜けません。
それはもう、全工程における核心部と言って差し支えないでしょう。
念のため注記させて頂きましょうね。
使用するディスクの種類(用途・形状)にも因るのですが、私が使用した切断用のディスクは、側面側を使った加工は禁じられているのです。
※こうした注意点は、各ディスクに明記されています。因みに、面外方向の力が入力されると、ディスクが変形・破損することがあります。
よって、此度の私が採った加工方法は、正規の使用法とは言えないので、その点くれぐれもご理解下さいね。※あくまでも自己責任
といった具合の背景を鑑みつつ、安全性と作業性を向上させるため、ディスク・グラインダーを作業台に固定してから成形・加工を行いました。
この手の作業は「様子を見ながら」に限ります。
何しろ削り過ぎた場合のリスク(やり直しの危険やフォローの手間暇)を想像するだけでゾッとしますからね(笑)。
とは言え、大胆に作業することも大切です。なにしろ、工具が工具ですし(暴れ馬)、使用方法が不適切なのですから(笑)。
だからこそ、仕上がりの見込みを掴むために、正確に採寸したり、ふり幅(許容誤差)を把握しておく必要がありますよね。
その上で納まりの落し処を見い出すというわけです。
粗々とした加工を終えてから、ロック・パーツを取り付けてみました。
これで目星がつきましたね(微笑)。
この後、ブレードを格納してみたところ溝深さに不足を感じたので、再度ディスク・グラインダーで調整を行い、かつブレードのネイル・マークを掴みやすくするためにハンドルの下面に凹み加工を施しました。
4:パーツの仮納め
翌7月19日は、仮組みしながら調整を行いました。
調整には工夫を要しましたが(当方の未熟さゆえ)、あれやこれやの方法を試して、モアベターな解決策に辿り着けました。
調整を終えてから再び分解し、ひたすらハンドルを磨き続けました。
元よりウレタンやラッカーといった塗材で艶を出すことは避けたかったので、原始的な方法ではありますが「磨き」で仕上げることに決めました。
それは、鹿角を手にした時から感じていたことでした。角の表面に残る、生前の鹿がつけたであろう大小様々な傷に魅力を感じたんですよね…。
こうした野生の痕跡を見るにつけ、それらの傷を作為的に消してしまうことが最適解とは思えなかったのです。
そのようなわけで、ハンドル表面の成形(削り)を最低限に止め、ハンドルの仕上げ(艶出し)を磨きだけで行うことに決めました。
此度は、情緒が理性に勝りましたね(微笑)。
何しろ、ナチュラルな白味を帯びた硬い角芯が放つ艶は、他の素材とは明らかに異なる美しさがありますから…(微笑)。
現在も、暇を見つけては磨いている(磨きの度合いを上げながら)ところです。と言っても、大汗をかきながら…というわけではありません。それこそ「〇〇しながらできる作業」ですからね(笑)。
むしろ、凡庸な時間を活用するだけで、掌の中で磨かれていく(育てていく)感覚が味わえるのだから堪りません。
こうした新鮮で永続的な体験が与えてくれる繊細で静かな刺激は、私の手仕事人生に良い影響を与えてくれるに違いありません。
そんな細やかな時間に幸せを覚えるのです(微笑)。