私の GW は 鍛冶仕事 時々 親父業【GW後半の記】
例年通り、正整粛々とした日々を過ごしたGW。
諸々の…と云うか、一点集中で物事が進捗したように思います。
偶さかだったのは、GW中もお仕事に奔走していたかみさんの唯一の休日(5月5日)に「何もないなら行ってみるか?」みたいなノリで、長男が暮らす岩手県の盛岡市へ「日帰りのテコ入れ」を咬ましに向かったことでしょうか。
まぁ〜 たまには「親父業」もやらないと(汗)。
当然の事ながら、市内の桜は終了。加えて、名峰・岩手山も霞かかって鮮明に見えませんでした。それでも、菜の花(上写真は菜の花に非ず)やツツジなどが咲き誇り、水が入った田んぼが眩しく輝いていました。
東北地方が「一年の中で一番穏やかな時」を迎えたと実感できましたね。
鋼を刃物へ
GW前半にアンビルの固定を済ませた刹那、私の劣化傾向にある脳内でデフラグが勃発してしまい、当初からの優先順位を変更して左刃(ひだりば:彫刻刀の様な刃物)の製作に移行することにしたと…。
と云っても、昨年秋頃の段階で下準備(SK材の丸棒をカットして木柄に固定)は終わっていたので、後はタイミングだけだったんですよね…。
そういう意味では、アンビルの固定が「再起動の呼び水」になってくれたと云うわけです。本当にタイミングって重要ですねぇ(感慨深)。
1:刃物への第一歩
ホモサピエンス史上、一二を争う「エポックメイキングな出来事」と云えば、人間が火と鉄を扱えるようになった瞬間の場面を想像してしまう私。
そういう意味でも、鍛冶仕事と云うのは、神聖にして化学的・物理的で、かつ血沸き肉躍る行為だと云えるでしょう。
やはり、金属を火でどうにかする…ってのは激熱ですよね。
おっと、話を戻しましょう。
まずは、火力が強いバーナーで丸鋼の先端を熱して「面」を作ることから始まります。自分が作りたい刃先の形状を意識して成形しました。
でも、上写真だけ見れば、ほぼほぼマイナス・ドライバーですよね(笑)。
とまれ、連休中の静かな住宅地に、聞き慣れない槌音が響くという、なんとも言えないシュールな一時となりました(汗笑)。
2:刃先の成形!
お次は、刃物の空気をまとわせていく工程です。
目論見の形になるように、鉄工ヤスリで大胆に削っていくわけですが、最終的には細やかな造形に適した刃物へ仕立てなければならないので、慎重に作業を進めました。
今回、初めてSK材を加工しましたが、思っていたよりも加工しやすかったかと。
しかし、最初の内は加減が分からず、砥石を使っても消えないような深いヤスリ跡を残してしましまいましたよ…。まぁ、これも経験ですね(苦笑)。
3:焼き入れと焼き戻し!
そして、刃物造りの「核心」とも云える焼き入れと焼き戻しです!
これは経験がモノを言います…がしかし、今の私には”それ”が不足しているので、あくまでも先達からの口伝・記録を自分なりに解釈して挑みました。
焼き入れにはバーナーを、そして焼き戻しにはカセットコンロを使用しました。因みに、冷却は水ではなく油(サラダオイル)を使っています。
手持ちの道具や材料で完結させました格好ですね。
大型の刃物と異なり、焼き入れ・焼き戻しする範囲が少ないので、その点はプレッシャーが少なかったと感じています。
此度の挑戦の成否は、暫く後に明らかになるはずです。たとえ願った結果が得られずとも、貴重な知見とささやかな自信を与えてくれるはず(微笑)。
ともあれ、最も重要な点は…。
焼き入れ・焼き戻しといった経験と見識を要する工程「核心部」を、他人の手に委ねることなく挑めたのと云うことです。
それは「道具を手造りする」というシンプルな命題の中にあって、欠かす事の出来ない通過儀礼だったと感じています。
4:研ぐ!
といった流れで、見た目だけは「刃物的な風体」へ寄せてきましたが…。
刃物としては、まだまだ役不足。
”刃物”を”刃物足らしめる”のが刃(やいば)だとすれば、その切れ味を発揮させるために欠かせない工程が「研ぎ」だと云えるでしょう。
そのようなわけで、木柄を成形する前に、とり急ぎ「裏出し」だけ済ませることにしました。※裏出し:刃裏の面を整えること。研ぎの必須工程。
もっとも、この時点で硬い鹿の角(北海道のユッキーさんが採取)に対抗できる程度には仕上がっています…が、更に切れる刃物にしなければ…と。
なんてことを考えておりましたが…。
刃が極小かつ特殊な形状をしており、一般的な刃物の研ぎ方ができないことに加え、そもそも彫刻刀の様な使い方をしない(彫るというよりも、引っ掻くような使い方をすることが多い)ことから、色々と考えた結果、仕上げ研ぎでは砥石とバフを併用することに決めました。
5:柄を削る!
そして、最後の工程「木柄の成形」です。
柄にはヒノキ材を使っています。
現段階でシャフトが長いような気がしているので、もしかしたら柄を交換するかもしれません。また、直線的なシャフトも、使い勝手が悪ければ湾曲させる可能性もあるので、木柄はザックリと仕上げました。
やはり、調整は使いながら…といった感じですね。
刃の種類が「職人の数だけ存在する」と云われる左刃……。
今回製作した左刃(4種類)には、有名無名の先達が付けた「味わい深い呼び名」がありますが、それはまたの機会にお伝えすることにしましょう。
温故知新とはよく言ったものです。
目に見える「分かりやすい表情」にのみ囚われることなく、その対象が「積み重ねてきた時間や背景」を、適切に理解し得る素養を身に付けたいですね。