心温まる お正月の食卓
それは 穏やかなお正月 でした。
勿論「一年の計は元旦にあり」ですので、元日から溶剤臭が漂うアトリエで、諸々の作業(埃と音はたてない!)に取り組んでおりましたよ。
さてと、三が日と云えば、正月料理が気になるところ。
昨今は、ネット・ショップでおせち料理を購入(スカスカおせち騒動が記憶に新しい…)することができますし、一方では、年末年始でも開店している大手スーパーに行けば、容易に生鮮食品が買えるということもあり、多忙を極める年の瀬に、疲労困憊した体に鞭打ってお正月の準備をする必要がない時代になりましたよね。
といった具合に、私(1968年生)が子どもだった時分のお正月風情からは、随分とかけ離れてしまった昨今のお正月ではありますが、そうは云っても、お正月の食卓というものは、普段とは違った「ハレの趣」があるものです。
新春初投稿(記事らしい記事の)は、そんなお正月の食卓を備忘していきたいと思います。お時間の許す方はお付き合いくださいませ。
心温まる お正月の食卓
我が家のお正月の食卓は、お世話になった方々からの心尽くしで彩られました。それらは、分節の時にふさわしい慎ましさと柔和さを感じさせてくれました。
家族共々、心から感謝しております(低頭)。
1:年の瀬に北方より逸品が届く!
去る12月31日に、北海道のSLFAメンバーゆきひろさんから、オホーツク海の海産物(鮭の山漬け・鮭の粕漬け・イクラの醤油漬け・タコ)が届きました!
この「鮭の山漬け」は、ゆきひろさんから教えてもらいました。それまでの私は、山漬けという言葉は勿論、存在すら知りませんでした。
初めて賞味した時は驚きました。
私が知る鮭の保存食(新巻鮭)とは大違い。と云いますか、この山漬けを保存食と定義するのはお門違いだと感じてしまったくらい美味しかったのです。
此度の「鮭の山漬け」も、身がふっくらとして、風味も抜群。かつ程度の良い塩味が堪りませんでした。(皮もまた旨いんだぁ〜これが。)
ゆきひろさん、どうも有り難うございました!
2:銘酒とのコラボレーション
そして、今年のお正月の食卓です。
”これだけの面子”が揃えば鬼に金棒。
そこで、過日Tom先輩から頂戴した生酛造りの日本酒「佐藤卯兵衛」を軸にするという考えに至りました(微笑)。
そこで、酒瓶の封を切って一口含むと、どうでしょう。
ふくよかな酸味と品の良い甘みが口の中に広がりました。「なるほど評価が高いわけだ。」と合点がいきました。
6号酵母や酒米・水は勿論、天然の乳酸菌が効いていると思われ、私なりの表現で恐縮ですが、一言でまとめれば「バランスが秀逸」ということになるでしょうか。
当然の事ながら、一昔前に流行った吟醸酒の様な華美に過ぎる香りや甘味は皆無。故に、肴の種類は選ばないと確信したデンキチ小父は、メンバーの皆さんから頂戴した食材だけで肴を構成することにしました(笑)。
そこで肝になるのは、肴の甘味部門です。
小生、もとよりきんつばで日本酒を嗜める類の人間でしたから、この佐藤卯兵衛でも甘味を試してみたいという欲求が頭をもたげました。
と云うことで、旧年12月に秋田のはじめさんから頂戴した「いちじくの甘露煮」に出番を要請しました(笑)。
そして、切り身にした「鮭の山漬け」を焼き魚(これが一番旨い)とし、「タコの足」は刺身ではなく、あえてカルパッチョに仕立てることにしました。
バランスに秀でた佐藤卯兵衛ならば、和洋の異なりは勿論、甘味にも十二分に対応してくれるはずだと考えたわけですね。
そして目の前にならんだ肴たち…。
それは、日本の「ハレの日」に相応しい端正な趣と、静かに正月を祝おうとする精神性が通奏低音した食卓になったと思います(自画自賛)。
何れの肴も佐藤卯兵衛との相性は抜群でした。
いちじくの甘露煮も良かったです。甘露煮を口にした後、暫くして佐藤卯兵衛を口に含むと、まるで貴腐ワインを飲んでいるような気分になりました(笑)。
※こうした飲み方が正しいか否かは分かりませんが、口内調味に長けた民族である日本人ならではの嗜み方だと考える次第です。
そして〆は、ゆきひろさんのイクラの醤油漬け(自家製)の出番です。こいつで白米(登米産ひとめぼれ)を掻っ込めば、それはもう至極のひと時。
SLFAメンバーの皆さんのご厚意により、心温まるお正月の食卓を家族で堪能することができました(微笑)。
本当に有難うございました!
正月余話
ここから余話になりますが、今暫くお付き合いを願いましょう。
1:初詣と大黒様
人混み&長蛇の列が大嫌いな私のせいで、我が家の初詣は1月3日となるのが例年の習わしでして…。まったくもって困った親父ですな(苦笑)。
とかく、従前(コロナ渦前)であれば、元旦を過ぎた1月3日でも相応の賑わいがあった大國神社の境内も、今年に関して言えば、年末から続く荒天の影響もあったのでしょうか、正月らしい華やいだ雰囲気は余り感じられませんでした。
それでも、標高が高い場所に位置する大國神社ならではの凛とした山の空気と仙台平野を一望できる豊かな眺望は健在です。
そして、祖父が手掛けた大黒様の石像も、参拝に訪れた老若男女に愛でられている様子を伺い知ることができて、幸せな気持ちになりました(微笑)。
「人間が作りし物」を「神」と崇めるのも、些か滑稽に思われる方もいらっしゃるでしょう。されど、古より人間は、目に見えない存在を、人間ならではの想像力を以て、何某かに見立ててきたわけですよね…。
それを思う時、祖父が願いを込めて彫った大黒様の姿もまた、ひとつの「稀有な存在」として捉えている自分がいます。
そして、私が生まれる前年に亡くなった祖父の手と自分の手が長い時を経て繋がっているという事実を確認できる機会にもなっているこの初詣もまた、私の人生に趣を与えてくれる行事になっていると感じているのでした。
2:かみさんの手作りデザート
お盆休みや正月休みといった連休になると、平素は多忙を極めるかみさん(我が家で一番の頑張り屋)の創作意欲が湧くようで(微笑)。
今年のお正月休みは、勤め先からお裾分けしてもらったリンゴを使ってアップルパイを作ってくれました。
がしかし…いつもと何かが違う?!
何気なく「艶がないねぇ…。」と呟くと、キッチンの方から「あっ!コーティングを忘れた!」という失意を帯びた声が聞こえてきました。
アプリコットジャムを塗り忘れたんですな(笑)。
私がパイの出来栄えを写真におさめていると、その様子を見ていたかみさんが「画像処理で艶を出しておいてね(微笑)。」と持ち掛けてきました。
「正月早々、捏造はやらんよ(笑)。」と応じて、かみさん作のデザートを賞味することに集中した私なのでありました。
(ってか、被写体を歪める捏造は一切やらん!)
正月休み 雑感
とまぁ、そんなこんなの正月模様でした(微笑)。
「年の瀬」「年末年始」なんて言いますけれど、いざ蓋を開けてみればシームレスに繋がる時間の狭間を指しているというだけの話……。
この「死ぬまで繰り返す感じ」に堪らなく苦しくなる時がありますが、生きとし生ける者全てが経験してきたサイクルだと思へば、何となくやっていけそうな気もしたり。
といった具合に、これから始まる2022年にあっても、平素は淡々粛々と、そして苦しい折にはケセラセラの心持ちで歩んでいきたいと思います。