溜まったスナップは「釣りの小さな自分史」
去るGW期間中の話を綴らせて頂きます。
数多の人々の活性が高まる長期休暇(盆暮れ正月&GW)とあらば、率先して家籠りすることが多くなった私ことデンキチ小父です。
思い返せば「長期休暇の過ごし方」に変化が起きた時期…いわゆる転換期が幾つかありましたね…。それは、20年前の独立を筆頭に、去る大震災や高齢者の問題も挙げられるでしょう。加えて、息子たちの成長も大いに影響していると思われます。
しかし、私自身の気質も通奏していることは否めないでしょう。
もとより、私は長蛇の列と人混みが大嫌いなので、混み合うことが予想される場所(某サクラ河川を含む)に自ら刺さりに行くことはありません。
そんな事をすれば、ストレスの海に溺れるは必至なので…。
と云ったわけで…。
今年のGWは「長い間 ”見て見ない振り” をしてきた小物の整理に着手してみた。」という無精極まりない話を綴らせて頂きます。
久方振りの「本域記事」ゆえ、相変わらずの長文駄文となりますが、ご都合の宜しい時にでも一読賜れれば幸いです(分割読破大歓迎!)。
溜まったスナップは「釣りの小さな自分史」
此度取り上げたスナップやサルカンのといった小さな金物の類は、釣り道具の世界にあって「小物」と呼ばれるジャンルにカテゴライズされています。
正に「名は体を表す」ですね(微笑)。
さわさりながら、それらの価値(役割や存在感)は「小物」という名前を覆すほど大きいですし、その繊細な構造や高い汎用性からは、人間の英知や釣り文化・歴史の深淵を感じさせてくれます。
という事で…。
本稿では、この「拘りのない私」が溜めるに任せて溜めてしまったスナップ類をご紹介しつつ、今一度「自身の好みを再確認する」という手前勝手な趣向にお付き合いを賜りたいと思います。
1:実はスナップ嫌いだった私
思い返せば………ですよ。
釣り仕掛けを自ら考えて作るようになった小学生の時分は、スナップやサルカンの類を何の疑いもなく使っていたはずです。
その後、スナップの存在を強く意識し始めたのは、やはりバス・フィッシングに熱を上げ始めた頃(小学4年生・1977年頃)だったと言えるでしょう。
釣り鈎につける餌だけを交換するのではなく、フックが装着されたルアーを丸ごと交換するルアーフィッシングにあって、スナップの有用性・利便性を闇雲に否定するアングラーは少ないと思われます。
とかなんとか書きつつも…。
かつての私(小学生)は、苦労の末に掛けることに成功したバス(赤坂見附の弁慶堀:当時は弁慶沼と呼ばれていた。)を、スナップの破損が原因でバラしたことをきっかけに、スナップを毛嫌いするようになったという黒歴史があります。
この傾向は、渓魚をルアーで狙うようになってからも続いたという事実を鑑みれば、デンキチ少年の失意の程度が分かろうものです(爆笑)。
因みに、その時に使っていたのが上写真のタイプです。
※実際に使っていたのは上写真とは異なり、スナップのワイヤー両端部は折り返しがあるタイプで、クランクやミノーは、スイベル無しで使用していました。
釣りの種別を問わず愛用者が多いであろう典型的なスナップですが、私は未だに使う気になれないでいます。トラウマって本当に恐ろしいですねぇ。
しかし、私も人の子ですから寄る年波には勝てません。
そうです、30代半ばから始まった老眼という厄介な経年劣化により、ルアーを交換する度にラインを結び直すのが辛い作業になってしまったわけです。
その様な仕儀に至り、とうとうスナップに手を伸ばしてしまったのでした。やはり「背に腹は代えられぬ」と云うことですね(苦笑)。
2:「迷走」それ即ち「自分史」
前置きはここまでとして、話を先に進めましょう。
此度の整理で、都合30種類のスナップ(サイズ違いやスイベル付を含む)が確認できたわけですが、その中で16個/12銘柄を並べてみました。
時間が許す方は、メーカーや銘柄を当ててみては如何でしょうか?
それにしても、こうやって眺めてみると、その時々に迷走していたことが分かろうものです。似たタイプのスナップを幾つか試してますし…。
自分の好みが明確になるまでは、狙う魚やサイズ、そして使うルアーによって色々と手を出していたんですな(苦笑)。
せっかくなので①~⑯までの銘柄を記しておきましょう。
①②③:がまかつ/音速パワー・スナップ
④⑤ :カルティバ/クロスロック・スナップ
⑥ :カルティバ/ストロングスナップ・ボールベアリング
⑦ :ササメ/ローリング・エギ・スナップ
⑧ :ヤリエ/グッドスナップ・ローリング付
⑨ :DUO/クロスロック・スナップ
⑩⑪ :SMITH/クロスロック・スナップ
⑫ :カルティバ/サイレント・マイクロ・スナップ・スイベル
⑬ :ヤリエ/グッドスナップ
⑭ :ダイワ/月下美人・エイトスナップ
⑮ :ヤリエ/スナップリング
⑯ :カツイチ(デコイ)/スパイラル・スナップ
といったラインナップになっています。
①~③は、私の様な無精者にとっては、痒い所に手が届くアイテムでした。もっとも、音速には到達し得ないルアーも相応にありましたが(苦笑)。
また、⑥~⑧や⑭~⑯は用途が限られますよね。特に、後者の極小スナップは、メバリングの時に”楽”がしたくて買いました(笑)。
この顔ぶれから、私の好みが透けて見えてきますね…。即ち、前出(バスの悲劇)の様な構造のスナップが無いと云うことです。
と同時に、老眼に悩んでいた事も伺われますな(汗笑)。
3:ヤリエさんの思い出
話は再び横道に逸れますがお許し下さい。
前項で取り上げたメーカーさん達の中で、私たち家族に素敵な思い出を与えて下さったメーカーさんがあります。
それは、兵庫県に所在するヤリエさんです。
メバリングに目覚めた長男(当時9歳・2009年)が「おとう!この本に載っているメバリー・フライを使ってみたいんだよ。」と具申してきたので、二人で仙台市内の釣具屋を探して回ったことがありました。
が、どこにも見つからなかったんですよねぇ…。
2009年当時、仙台市内の釣具屋で扱っていたのは、同社のメバリー早掛けくらいなものでした。しかも、お店に取り寄せを依頼したところ「ケースで買わなければならないので注文を受けかねる。」と言われてしまいました(悲報)。
※因みに、当時の私はメバリー早掛けのヘヴィーユーザーだったこともあり、ヤリエさんの印象は頗る良かった。
そのような訳で、ヤリエさんに直接問い合わせしてみたところ、小売りの通販を快諾して頂き、早急に対応して頂いたのでした(感激)。
ヤリエさんが素晴らしかったのは、初期的な対応だけではありませんでした。それは商品が届いた時に、喜びとなって現れました。
小包の中には、注文した商品だけではなく「当社で新しく発売するメッキ用のスプーンですので使ってみて下さい。」と記された手紙と共に、新製品のスプーンまで同梱してあったのです。
このハートフルな対応に感激しましたね(感涙)。
何はともあれ、カブラとフライのリミックスとも言えるメバリー・フライの釣果は頗る良くて、ショアからのデイ・ゲームでも普通に通用しました。
満足できる釣果を得た長男も「してやったりの顔」をしていましたっけ…。自分で考えたわけでもないのにね…(苦笑)。
4:お気に入りのスナップ
”私的に過ぎる思い出”はここまでにして、先を急ぎましょう。
前出のスナップ群の中で、私が一番好んで使っているのが、下写真の白枠で囲っているSMITHのクロスロックスナップです。
結局ですね…。
構造的に合理的で、かつ力学的に理想的だと思えたからなのですが、もう一つ理由があります。それは、私にとって開閉が楽だったという事です。
マテリアルがしなやかで、開閉がし易いんですよね。それでいて所定の強度を確保しているので、私としては好ましく感じています。
※~的と~的が並んでますが、目を瞑って下さい(笑)。
いずれにしても、ひとつの理由だけでは食指が動かない私にとっては、珍しく複数の条件が揃ったスナップだったと言えるでしょうか。
5:相変わらずの迷走
ところが、このSMITHのスナップには問題がありました。私の生活圏内に存在する釣具屋の中だと、常備しているお店が限られていたのです。
私が知る限り、仙台市内の釣具店で同商品を常備しているのは杜の家 ブルックさんだけでした。(かつては大手量販店でも見かけたことがありましたが、今では売れ筋の定番商品しか並んでいませんね。)
ところが、とうのブルックさん…。
件のコロナ感染問題勃発以降、実店舗をクローズ(ネットショップは通常通り)してしまっていたのですね…。お店も大変だったと思いますが、熱烈なブルック・ファンも業を煮やしたことでしょう(微笑)。
わざわざ安価なスナップを買うのに、割高な郵送料を費やすのもバカバカしいと考えた私は、今春のサクラマス釣りに備えて「我が理想のスナップ候補」を物色する羽目になったというわけです。
そんな最中に見つけたのが、ダイワのフィンガーフィットでした。
我が意を得たりのクロスロックで、強度も十二分。そしてルアーの納まりも良さ気だったので、レコードのジャケ買いよろしく即買いしました。
しかしですね……。
問題が無かったわけではありません。
帰宅して直ぐに使ってみると…存外に硬いと(悲報)。
勿論、開閉できなくはないですよ。しかし、寒風が吹きすさぶ中、かじかんだ指先で開閉するのが苦痛になることが容易に想像できました。
忍耐の釣りにおいて、ルアーのローテが苦行になるのは拙いのです。集中を切らさないためにローテーションするタイプの釣り師なので…(苦笑)。
ともあれ、品質(能書きを信じれば限りなく完璧なスナップかと)はとても良いと感じましたので、夏~秋にかけての海釣りに使おうと考えています。
6:コロナ渦の買い物
さて、こんな紆余曲折を経た4月初旬のことでした…。
衝撃の事実が判明するのです。
なんと、いつのまにかブルックさんが実店舗をオープンしていたのです!あろうことか2月頃から開店していたみたいですね(トホホ)。
そんなこんなで「いざ鎌倉!」とばかりにブルックさんへ馳せ参じて、SMITHのクロスロックスナップ(2サイズ)を大人買いしてきましたとさ(笑)。
勿論、独り占めはしません。ちゃんと残してますのでご安心を…って、このスナップのヘヴィーユーザーって、巷にどのくらい存在するのでしょうか?
因みに、私は#1を通常の鱒釣り(渓流や里川を舞台にしたMAX40㎝程度のマス類)、#2をサクラマスに使っています。
7:スナップ雑感
この「小さな金物」のクオリティー如何によってキャッチ率が左右される場合もあるわけですから、軽んじるわけにはいきませんよね(微笑)。
そうした重要度に物質的な大小は関係ないでしょう。
而して、本稿で取り上げてきたスナップだけを見ても、その姿形は何れも個性的だし、設計者の意図や想いを感じることもできますよね(微笑)。
故に、これら小さな金物たちは、釣り文化の変遷を物語ると同時に、数多のニーズに応えるために進化を繰り返してきたと言えるでしょう。
それも用途が普遍的であるにもかかわらず…です。と云うか、普遍的な用途であったが為に、進化し続けてきたといった方が適切かもしれませんね。
そして、これらの小物を溜め込んできた私たち釣り師は、物言わぬ小さな金物を眺めながら、自身の釣り歴史を反芻するのです。
そう、多少の感傷と興奮を交えながら…(微笑)。